あの日から30年

先日、長年の友人である歯科医と話をしました。

彼は勤務医として10年、その後独立して開業医として10年。朝から晩まで患者さんと向き合い、責任感を背負い続けた結果、体を壊してしまいました。今は病院を別の人に任せ、引退生活を送っています。

 

昭和40年前後に生まれた世代にとって、「仕事」は生きるための目標でした。

 

会長もよく言っていました。

「お前、その仕事で食っていけるのか?」

 

この問いは、当時の社会ではごく当たり前。

「責任感」「常識」「勤勉さ」が評価され、体を酷使してでもやり遂げるのが正義でした。

しかし、時代は変わりました。

 

いまは「仕事は生きるための手段」であり、人生の全てではないという考えが広がっています。

一言でいえば『ワークライフバランス』ですが、私はこの言葉に少し違和感があります。なぜなら、この言葉はどこか「仕事=苦役」と前提にしているように感じるからです。実際、家事や育児、本気で子どもと向き合う時間も、立派な『労働』です。

面白さや喜びもありますが、朝から晩まで全力で向き合えば、誰だって疲れますし、投げ出したくもなります。

 

仕事と家庭、どちらが楽かではなく、どちらも本気でやれば大変で価値のあることです。人間は昔より弱くなった——そう言う人もいます。しかし私は、「弱くなった」のではなく、「許される働き方の幅が広がった」のだと思います。

AIの登場など、便利な道具も増え、体や時間を酷使しなくても成果を出せる方法が増えました。一方で、「やり切った」達成感や、苦労を共有する仲間意識が希薄になっているのも事実です。時代ごとに『当たり前』は変わります。大事なのは、どの時代に生きていても、仕事への向き合いと心身のバランスですね。

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